— なぜ逆走は止められない?高速道路でスパイクが使えない本当の理由(日米比較)—

A wide American highway and townscape in the early 1990s, illustrating the environment where wrong-way driving incidents can occur
Reno, NV, USA — May 1991 · Velvia50

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ESSAY


逆走は物理的に止められるのか?1991年、サクラメントで見たスパイク装置から生まれた単純な発想は、現実の前であっけなく崩れました。日米の事例から、その理由を探ります。


1991年のある夏。

サクラメントの河川公園で、私は妙なものを見つけた。
駐車場ゲートの地面に埋め込まれた、鋭い金属の歯。

正面から通る車は何事もない
逆方向から進入すると、路面からノコギリのような鋭い歯が地面から迫り出してくる。

もちろん、その鋭い歯はタイヤを突き刺す。
まるで地面が「食いつく」光景を想像して、目を輝かせた。
その瞬間、私の頭の中は完全に単純明快な発想に支配されていた。

これを高速道路に設置すれば、逆走車もパンクで止まるじゃないか?

──今考えると、なんと浅はかで、滑稽な妄想だろう。

日米の高速道路における「逆走」という現実

日本での逆走事故の現状

日本では、高速道路での逆走事案が毎年累計で 約200件前後 発生していると報告されている。
つまり、2日に1回以上の逆走事案が報告されている計算 だ。
ただし、そのうち事故(他車との衝突)は年間で 約40〜50件程度 で推移している。
さらに、逆走事故は高速全体の事故と比べても致命的になりやすく、死亡事故の割合が約38倍 との指摘もある。

高齢ドライバーが運転する車が関わることも多く、特に認知機能の低下や入口・出口の誤認が一因として分析されている。

アメリカでの逆走事故の状況

一方アメリカでは、逆走による死亡事故の数がかなり深刻なレベルにある

米国の高速道路や分離帯道路で発生する逆走関連の死亡事故は、平均して 年間300〜500人規模 との推計がある。

これは、大きく異なる特徴がある。
米国では常に高速道路が生活圏と結びつき、走行距離が長く、速度も速くなる。
逆走による衝突は頭から激しく衝突するケースが多い ためだ。

これらの事故の多くは、アルコール影響・高齢ドライバーなどが絡んでいるとの分析がある。

スパイクの現実とアメリカでの成功例

この装置はアメリカでは「ワンウェイ・スパイク」や「タイヤ・デフレーション装置」と呼ばれている。

主に駐車場やゲート付き施設で実際に活躍している。

  • 駐車場やコミュニティゲート
    間違って逆方向に入ろうとする車は、ほぼ確実にタイヤをパンクさせられる。
    あるショッピングモールでは、金属歯の設置以降、逆走による出入口事故がゼロになったという。
  • 警察の追跡用ストップスティック
    逃亡車両に対してタイヤを徐々に破損させ、速度を落とす方法として大活躍。
    ニュースで何度も「追跡が無事終了」と報じられる場面を見ると、うんうんと頷いた。

しかし、高速道路では物理的に止めることは不可能だ。

タイヤはすぐに空気が抜けず、車はしばらく走り続ける。
バイクなら転倒や、正方向の車も巻き込む可能性がある。

──あの時の私の妄想は、現実ではただの夢物語にすぎなかった。

日本での存在と活用事例

では、日本はどうだろうか。

  • 駐車場での逆走防止 日本でもマンションや大型施設の駐車場で、ワンウェイ・スパイクやタイヤパンク防止板が使われることがあるらしいが……
    私は実際に見たことがない。
  • 高速道路での逆走対策 日本の高速道路では、物理的なパンク装置は存在しない。
    むしろ検知と警告のシステムが中心だ。
    • 逆走検知センサー
    • 赤色点滅の警告灯・電光掲示板
    • 警察への自動通報

これはまさにアメリカの高速道路と同じで、人間の認知に頼る方式である。
物理的に止めるアイデアは、日米ともに現実的ではないのだ。

ADOTも呆れている

さらに笑える話がある。

アリゾナ州運輸局(ADOT)には、すでに同じ質問や提案が数百件も寄せられているらしい。

  • 「タイヤを犠牲にして逆走車を止めろ!」
  • 「スパイクを高速ランプに敷設せよ!」

職員はさぞ心の中で苦笑いしているだろう。
日本でも、こうした奇抜なアイデアを安全対策に盛り込みたい人は少なくないはずだ。

自分の浅はかさを噛み締める

結局、あの時の私は、知識も現実も頭の隅に追いやって、
「タイヤが命を救う!」という単純な妄想に浸っていた。
今考えると、恥ずかしい気分だ。

でも、その浅はかさもまた、1990年代の私の姿なのだ。
駐車場や警察のストップスティックで成功している例を見るたびに、
「自分の妄想も少しは現実味を帯びるかも」
と一瞬期待してしまったことも、今となっては笑い話である。

思い出として笑い飛ばす

逆走対策の現実は、物理的な罠ではなく、人間の注意力に頼るしかない。

私は今でも、あの鋭い金属の歯を思い出すたびに、
「高速道路の逆走から命を守ろうとして浅はかだった自分」
を微笑ましく思い出すのだ。

成功例を見れば「タイヤが命を救う!」場面もある。
しかし、日米どちらの高速道路でも、単なる妄想に終わる。
あの時の発想は、現実世界では笑い話にすぎない。

でも、恥ずかしさと共に懐かしくもある。

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