— なぜアメリカのナンバープレートは自由に文字を選べる? 日本の希望番号制度との違い —

Cadillac convertible with “GAMBLER” personalized license plate in Nevada, early 1990s
Donner Pass Rest Area, CA, USA — Nov 1991 · Velvia50

English version →


DISCOVERING AMERICA


アメリカのナンバープレートが語るのは、州だけではありませんでした。そこには、もっと個人的な言葉も刻まれていました。

限られた文字の中に、名前や意味や、時には冗談のような表現が詰め込まれています。短い記号の並びが、そのまま持ち主を表していました。

カリフォルニアでは、すべての車は匿名の存在ではありません。ナンバーは、その人の一部として機能し始めていました。

1990年代のアメリカのナンバープレートを一覧で見る。


語るナンバープレート達

1991年11月、ネバダ州リノに向かうルート80。
撮影した場所は、ドナー・パス・レスト・エリア。

1960年前後のCadillac Series 62系と思われる、
ヴィンテージ・キャディラックのオープンカー。
史上最大、オーバー8000ccのエンジンを積み、
Litter3Kmしか走らない真っ赤な巨体に、
前方に大きく張り出したロングホーン。
運転席には、バンダナとサンブラスをかけた犬。
これはもう普通の乗用車ではない。

けれど、今回私の目を引いたのはそこではなかった。

—— ナンバープレート

はっきりと「意味を持つ」文字の並び。

—— GAMBLER

当時の私はまだ知らなかった。
後日、それが自由に文字を選べる仕組みだと知る。


Personalized License Plateとは

管轄は California Department of Motor Vehicles、通称DMV。
申請すれば、最大7文字まで、自分の好きな英数字を並べられる。

もちろん何でも通るわけではない。スラングや攻撃的表現は審査対象になる。

それでも——

街中のいたるところで、意味を持つ言葉を掲げた車が走っていた。

信条を掲げた車が走っていた。
夢を掲げた車が走っていた。
車は移動手段である前に、自己アピールの手段でもあった。

さらに面白いのは、文字だけではないことだ。
プレートの背景デザインまで選べる。

大学支援、文化支援。
環境保護支援のプレート。
1950年代、1960年代の復刻デザイン。
「歴史を大切にする」という態度が、ナンバーという小さな金属板にまで宿っていた。


この「なんでこうなってるの?」という違和感、実は他にもたくさんありました。 アメリカ郵便の合理的なシステムを解説
自販機と公衆電話で見えた日米の合理性の違い
なぜアメリカには電線がない?日本に電柱が残る理由と徹底比較

日本の希望番号制度

一方、日本。

「希望番号制度」が始まったのは、帰国後の1999年5月
管轄は 国土交通省。

バブル崩壊後の消費刺激策。
クルマのパーソナル化。
そして、行政にとっての安定収入。

制度が始まると、利用率は約50%に達したという調査もある。
数字だけの選択にもかかわらず、普及率はアメリカ(約5.7〜8.5%)よりむしろ高い。
図柄入りナンバーは約4%。こちらはまだ控えめだ。


文字が走る国、数字が並ぶ国

アメリカ、とくにカリフォルニアでは、

  • 文字列そのものを自由に設定できる
  • 英数字の組み合わせ
  • 明確なメッセージ性

普及率だけ見れば少数派かもしれない。
だが、その存在感は強い。

対して日本は、

  • 4桁の数字のみ
  • アルファベット不可
  • 地名は自動決定

数字だけ。それでも人は意味を込める。

1122(いい夫婦)・2525(ニコニコ)・4649(よろしく)

まるでポケベル時代の暗号のように。


ナンバーに現れる文化の差

ここで、ひとつの気づきがある。

日本のナンバーは「識別装置」であって「自己表現媒体」ではないという設計思想の上にある。
読みやすさ、管理のしやすさ、社会の秩序、そこに優先順位がある。
そのため文字の解禁までには至らない。

アメリカは「文字で自己表現可能」。
7文字あれば「単語」になる。
声明文だって作れる。

日本は4桁なので「暗号」になる。
4桁でささやき数字で遊ぶ。

日本は約10年遅れてパーソナルナンバー文化に入った。
だが始まってみると、普及率はむしろ高い。
面白い。自己主張は控えめでも、遊び心は強い。


どちらが豊かか、という話ではない。
ただ、文化の違いが、小さな金属板に凝縮されている
次にハイウェイを走る時、私はきっと道路の中の走るメッセージにもピントを合わせるだろう。

1990年代のアメリカのナンバープレートをまとめて読む。

Read this article in English →

© 1990-1992 flt1195.com