
ROAD TRIP 1990–1992
San Gregorio State Beachを出発。
右折して、いよいよCalifornia Route 1へ入った。
思っていたより、道は狭い。
片側一車線。
路肩も広くない。
巨大な18輪トラックの姿はなく、代わりにキャンピングカーが目立つ。
「これが、あのRoute 1なのか」
そう思いながら、長い坂を登っていく。
アクセルを踏み込む。
エンジンが唸る。
そして――
坂を登り切った瞬間、世界が開けた。
目の前に広がったのは、太平洋。
切り立った断崖。
どこまでも続く海岸線。
その景色は、想像していたCaliforniaよりも、はるかに大きかった。

右を見る。
荒々しい太平洋。
波が断崖にぶつかり、白い飛沫を上げている。
ガードレールもない。
道路のすぐ先は、むき出しの崖。
少し怖い。
でも、目を離せない。
左を見る。
こちらは別世界だった。
緑の丘陵。
初夏の草原。
風に揺れる花。
鳥の声。
蝶が舞う。
右は荒々しい海。左は穏やかな楽園。
その二つの世界の間を、Route 1は走っていた。
海からの湿った風と、丘から流れてくる乾いた風が車内へ入り込む。
紙のRoad Atlasが、風でばたばたと音を立てる。
それでも窓は閉めなかった。

道路は、まるで自然が造ったジェットコースターだった。
上る。
下る。
また上る。
崖の上を走ったかと思えば、今度は海の近くまで降りていく。
美しいビーチ。
小さな駐車場。
サーファー。
キャンピングカー。
錆びたピックアップトラック。
ルーフにサーフボードを積んだVolkswagen。
どこを見ても、1991年のCaliforniaだった。
何度も、「ここで停まろうか」と思った。
でも、停まらなかった。
次のカーブの向こうが見たい。
次の坂の向こうが見たい。
理由は分からない。
ただ、先へ行きたかった。
だから走り続けた。

ラジオもつけない。
カセットテープも流さない。
聞きたかったのは、太平洋の波の音だった。
ところが、現実には波の音などほとんど聞こえない。
聞こえるのは、エンジンの唸り。
傷んだ舗装を走る、タイヤのロードノイズ。
それでも窓は開けたままだった。
何時間走っても飽きなかった。
ただ、ただ、走り続けた。
海岸線はどこまでも続いている。
風も、ずっと吹いている。
そして今になって思う。
あの日、聞いていたのは波の音ではなかった。
風の音だった。
この先へ
Route 1をさらに南へ。
そして、旅の途中で思いがけない場所に立ち寄る。
Santa Cruz。
そこで見つけたのは、コーヒーとドーナツ、そして「自由満タン」の午後だった。
ROAD TRIP 1991|Day 1
旅は続く →

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