
ROAD TRIP 1990–1992
海を目指して走り続けた一日
1991年5月、カーナビもスマートフォンもない時代。
紙の地図だけを頼りに始まったロードトリップ。
この日は「サクラメント(Sacramento)からサンタマリア(Santa Maria)」まで「約440マイル(約710km)」を走破しました。
この距離は、東京〜岡山くらいの距離に相当します。
ひたすら西へ南へ走り続けた一日でした。
Day1を振り返って-「人は何を覚え、何を忘れるのか」
サクラメントを出発した朝、若い旅人は太平洋を目指して西へ走り始めました。
長い橋を渡り、森を抜け、初めて見る海に興奮し、ビッグサー(Big Sur)の断崖に圧倒されます。
そして深夜、ようやくホテルのベッドへ倒れ込みます。
そのすべてが、まだ初日一日での出来事でした。
そして35年後に残ったのは、絶景の記憶だけではありませんでした。
名前も知らない人々との小さな出会いや、風の匂い、道路の継ぎ目の音でした。
ロードトリップ初日は、「遠くへ来た」という事実よりも、「何が記憶に残るのか」を教えてくれた一日でした。
Day1の記事一覧
1. アメリカ西部ロードトリップ開始(1991)
サクラメントのアパートを出発した朝。紙の地図、ポジフィルム、大きなアイスボックス、そして炊飯器を積み込んだ車は、西へ向かった。憧れだったカリフォルニア ルート1(California Route 1 )へ向かう旅は、単なるドライブではなかった。テレビや映画の向こう側に存在していたアメリカへ、自分自身が足を踏み入れていく一日の始まりだった。
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2.サンマテオ ヘイワード橋と静かなシリコンバレー(1991)
サクラメントを出発した車は、ベイエリアを抜け、静かだったシリコンバレー(Silicon Valley)を横切り、太平洋へ向かう山の入口へ辿り着いた。まだ海にも着いていない。それでも、半日の間に農業地帯、巨大都市圏、湾岸地域、郊外住宅地、そして牧歌的な丘陵地帯へと景色は何度も姿を変えた。ロードトリップの魅力は、目的地だけではなく、その途中にこそあることを、旅は早くも教え始めていた。
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3. ウッドサイド、スーパーの駐車場に現れたカウボーイ(1991)
海を目指して走っていたはずなのに、旅は途中で思わぬ寄り道を用意していた。静かなシリコンバレーの隣には、馬が道路を横断し、カウボーイがスーパーへ買い物に来る町が残されていた。未来を象徴する地域のすぐ隣で、19世紀から続く暮らしが息づいていたことは、若い旅人にとって大きな発見だった。
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4. ウッドサイド、シリコンバレーとカウボーイ文化が交差した場所(1991)
海を目指して西へ向かっていたはずなのに、その途中で旅人は何度も別のカリフォルニア(California)と出会った。最先端技術を生み出そうとしていたシリコンバレーの隣には、馬が道路を横断し、牧草トラックが走る町があった。そして森の中には、ハーレーライダーたちが集う交差点があった。カリフォルニアとは一枚の風景ではなく、異なる時代と文化が重なり合う巨大なモザイクだった。
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5. La Honda Creek Preserveの赤い納屋(1991)
旅の始まりは空港でも、観光名所でもなかった。ルート84(California Route 84)の森を抜けた先で出会った、一棟の赤い納屋だった。そこには人も家畜もいなかった。ただ草原と風と静寂だけがあった。しかし、その風景こそが、自分が幼い頃から思い描いてきたアメリカの原風景だった。そこで初めて、旅の歯車は静かに噛み合い始めた。
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6.サン・グレゴリオ、風の記憶を追いかけて(1991)
山道を下るにつれ、空気は少しずつ変わっていった。森の匂いは潮の香りへと変わり、視界の先に海が現れる前に、身体が先に太平洋の存在を感じ取っていた。そして耳鳴りだけが響くほどの静寂の中で、自分は初めてアメリカという巨大な空間の自由さと孤独さを知った。
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7. サン・グレゴリオ、ステージストップの物語(1991)
太平洋へ近づくにつれて、景色は未来から過去へと巻き戻されていった。シリコンバレーから始まった道は、馬の町を通り、赤い納屋を過ぎ、ついには駅馬車の時代へとたどり着いた。そして旅の途中で初めて、地図ではなく自分の直感に従って車を引き返した。理由は説明できない。ただ、その小屋を通り過ぎたままでは、一生後悔する気がしたのだ。
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8. サン・グレゴリオ、ジェネラル・ストア 94074 「生きたタイムカプセル」の物語(1991)
1889年から続く小さな郵便局で、自分宛てのポストカードを書いた。紙の地図、フィルム、ポストカード。1991年の旅は、今のようにデータで記録されるものではなく、時間を封じ込める行為の連続だった。海へ向かう途中で立ち寄った小さな郵便局は、過去と現在、そして未来の自分を結ぶタイムカプセルだった。
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9. サン・グレゴリオ・ステート・ビーチ、ルート84が終わり、太平洋が始まった場所(1991)
Route84は、過去へ向かうタイムマシンだった。駅馬車の時代を通り抜け、1889年の郵便局を訪れ、最後の丘を越えた先で、突然太平洋が姿を現した。そこには静止した歴史ではなく、ビーチで笑い、遊び、海を楽しむ人々の現在があった。そしてその瞬間、自分は観客ではなく、カリフォルニアの午後を生きる一人の旅人になっていた。
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10. サン・グレゴリオ・ステート・ビーチ、ルート84の終点で見た 「過去・現在・未来」(1991)
サン・グレゴリオ・ステート・ビーチ(San Gregorio State Beach)で車を止めた時、旅はまだ終わっていなかった。ルート84と共に海へ辿り着いたサン・グレゴリオ川(San Gregorio River)は静かに太平洋へ消え、風に削られたサイプレスは現在の海岸線を語っていた。そして丘の向こうには、未来へ続くルート1(California Route 1 )が待っていた。過去と現在と未来が一枚のVelviaに収まり、その最後のシャッター音がルート84という第一章の幕を静かに閉じた。
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11. サンマテオ郡南部海岸、初めて走ったカリフォルニア・ルート1(1991)
ルート84は、過去へ向かうタイムマシンだった。しかしルート1は違った。坂を登り切った瞬間、海と丘陵が同時に視界へ飛び込み、世界は一気に開けた。右には荒々しい太平洋、左には牧歌的な楽園。絶景の前でも車を止めず、ただ次のカーブを目指して走り続けたのは、若さゆえの衝動だったのかもしれない。そして今振り返ると、あの日覚えているのは景色そのものではなく、窓から吹き込み続けた風の音だった。
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12.サンタクルーズ、コーヒーとドーナツと自由満タン(1991)
太平洋へ到達し、ルート1を走り始めた頃、自分はまだアメリカを眺めている観客だった。しかしサンタクルーズのガソリンスタンドで、コーヒーを注ぎ、ドーナツを選び、ガソリンを入れ、窓を磨いた時、自分は少しだけこの国の日常の中へ入り込んでいた。セルフサービスの社会は決して冷たくなく、小さな親切が自然に交わされる場所だった。そして気づけば、自分も誰かのためにドアを押さえていた。これは景色の発見ではなく、「暮らし方」の発見だった。
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13. サンタクルーズ、公衆電話が旅を変えた日(1991)
サンタクルーズ(Santa Cruz)のガソリンスタンドで、公衆電話からホテルを予約した。たった一本の電話だった。しかしその瞬間から旅は変わった。予約したのは部屋だけではない。そこへ向かわなければならない未来だった。それまでの自分は、気が向けば予定を変えられる自由な旅人だった。だが受話器を置いた瞬間、旅は少しだけ責任を持ち始めた。35年後の今振り返ると、あの電話はホテルの予約ではなく、「旅の目的」を予約していたのかもしれない。
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14.モントレーとカーメル、辿り着けなかった場所たち(1991)
太平洋へ辿り着き、ルート1を走り始めた時、自分はようやく憧れの風景の中へ入った。しかしホテルを予約した瞬間、旅には初めて義務が生まれた。モントレー(Monterey)もカーメル(Carmel-by-the-Sea)も通り過ぎるしかなかった。それでも完全には諦めきれず、何度か車を停め、景色を切り取った。そして35年後の今も覚えているのは、壮大な景色の細部よりも、辿り着けなかった町と、RCコーラで冷やそうとして失敗したあの奇妙なコーヒーの味だった。
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15. ビッグサーからサンタマリア、ロードトリップ初日の終着点(1991)
ルート84は過去へ向かうタイムマシンだった。1889年の郵便局を訪れ、駅馬車の時代を通り抜け、その先で太平洋へ辿り着いた。ルート1では歓喜の断崖が続き、風の音だけを聞きながら走り続けた。途中でホテルを予約し、旅は自由だけではないことも知った。モントレーを通り過ぎた悔しさも、RCコーラで冷やそうとして失敗したコーヒーの味も、今では大切な記憶になっている。そしてビッグ サーの終わりを走る赤い車を見送りながら理解した。旅とは絶景を集めることではなく、風や匂いや振動が自分の中へ積み重なっていくことなのだと。
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ルート概要
- 日付:1991年5月
- 走行距離:約440マイル(約710km)
- 走行時間:約14〜15時間
- 出発地:サクラメント(Sacramento)CA.
- 到着地:サンタマリア(Santa Maria)CA.
- 走行ルート:
- サクラメント(Sacramento )→
- I-5(Interstate 5)→
- I-80(Interstate 80)→
- I-880 (Interstate 880)→
- サンマテオ・ ヘイワード橋(San Mateo–Hayward Bridge) →
- ルート101 ( U.S. Route 101)→
- ルート84(California State Route 84) →
- ルート1(California State Route 1 )→
- サンタマリア(Santa Maria)
- 主な立ち寄り地点:
- ウッドサイド(Woodside)
- ラ オンダ(La Honda)
- サン グレゴリオ(San Gregorio)
- サン グレゴリオ ステート ビーチ(San Gregorio State Beach)
- サンタクルーズ(Santa Cruz)
- ビッグ サー(Big Sur)
- 宿泊地:サンタマリア(Santa Maria)
- 宿泊先:エアポート・ヒルトン(Airport Hilton)
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▶ 1991年アメリカ西部ロードトリップ Day 1|旅の初日を振り返って
Kindle版について
このロードトリップは、後日Kindle版として再編集予定です。
Kindle版には未公開写真や、本編では触れられなかった旅の裏話を収録予定です。
おたのしみに。