― Social Security Number(SSN)とは?社会保障番号がアメリカで重要な理由 ―

Downtown Sacramento street leading toward the California State Capitol, California, early 1990s
Sacramento, CA, USA — May 1991 · Velvia50

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DISCOVERING AMERICA


アメリカでは、何かを契約しようとすると必ず聞かれる質問があります。「SSNある?」——それは単なる事務的な確認ではなく、その人が社会に参加しているかを示す合図でもあります。1990年代初頭のカリフォルニアでの体験から、SSNという社会保障番号の意味と、その背後にある信用社会の仕組みを見ていきます。

日本人が最初に驚く質問

カリフォルニアに着いてしばらくすると、同じ質問を何度もされるようになった。

「SSNある?」

日本から来たばかりの自分には、まるで秘密の暗号のように聞こえた。
SSN‥‥‥
それは Social Security Number のことだった。

銀行でも聞かれる。
電話会社でも聞かれる。

何か契約しようとすると、だいたい最初に聞かれる。

「SSNある?」

あるわけがない。
持っていないと言うと、相手は少しだけ困った顔をする。
そしてこう言う。
「じゃあパスポートでいいよ」

この瞬間、日本から来たばかりの人は気づく。
アメリカは、名前より先に番号を聞かれる社会なのだと。

ソーシャルセキュリティーナンバーとは何か

SSNはもともと、アメリカの社会保障制度のために作られた番号だ。
発行しているのはSocial Security Administration。
1936年に始まった制度で、目的はシンプルだった。

  • 年金
  • 税金
  • 就労記録

これらを一つの番号で管理すること。

ところがアメリカでは、便利なものはすぐに用途が広がる。
気がつけばSSNは、単なる社会保障番号ではなくなった。

銀行口座。
クレジットカード。
保険。

契約すべてに登場する。

つまりSSNは、実質的にアメリカ社会の信用番号(Credit ID)になった。
言い換えれば、ほとんど 国民ID のようなものだ。

SSNがないと何もできない国

1990年代のアメリカでは、SSNは本当にあらゆる場面に登場した。

例えばこんなときだ。

  • アパート契約
  • 電話契約
  • 銀行口座
  • 車の保険
  • クレジットカード

すべてに共通するのは、「信用情報(credit history)」という考え方だ。

この人は信用できるか。
それを判断するために使われるのがSSNだった。

番号がある。
すると履歴ができる。
履歴があると信用が生まれる。

つまりアメリカでは、

番号 → 履歴 → 信用

という順番で社会が動いている。

取得できる人

ただし、この番号は誰でももらえるわけではない。
SSNを取得できるのは基本的に次の人たちだ。

  • アメリカ市民
  • 永住者(グリーンカード保持者)
  • 就労資格のある外国人

観光客や留学生はもらえない。

実際、自分も一度試してみた。
90年代初頭は、インターネットのない時代。
直接、社会保障事務所(Social Security Office)に行って聞くしかなかった。

SSOは建物は役所だけれど、雰囲気は銀行のロビーのようだった。
ここでSSNの番号をもらうために、まずは順番待ちの番号をもらう。
番号が連番で印刷された紙テープが、ケースに入って壁に設置してある。
そのケースから飛び出た紙テープの先端を、ちぎり取るのだ。
それが日本で言う番号札となる。
極めてアナログ的なシステムである。
ここにもシンプルさゆえの合理性を感じる

順番が来ると、窓口の女性に聞いてみた。

「日本人でもSSN作れますか?」

その女性は笑って答えた。

「働く人ならね」

その一言で、僕のSSN計画は終了した。
観光気分の外国人には、社会保障番号はくれないらしい。

アメリカで働き、アメリカに税金を納めている人。

その人たちのための番号なのだ。
観光客や留学生には必要ない。
社会に参加していないからだ。
当然といえば当然だ


これはSSNの話だけではありません。
アメリカ社会の設計の一部です。
→ 日米の仕組みに共通する考え方はこちら

ある小さな発見

アメリカで暮らしていて面白かったことがある。

時計やカメラに、自分のSSNを刻印している人がいるのだ。
盗まれたときのためだという。
つまりその番号は、持ち物の持ち主を証明するものでもある。
自動車のナンバープレートと同じ様に。

名前ではなく番号。
ここでもやはり、番号が人を代表している。

あるとき思った。
SSNを聞かれるあの質問は、たぶんこういう意味なのだ。

「SSNある?」

それはつまり、

「君はこの社会に参加している人?」

という確認なのだ。

日本との違い

この制度を思い出すたびに、日本のマイナンバー制度のことを考える。
アメリカと日本はかなり違う。

アメリカ

  • 1936年から存在
  • 民間でも広く使用
  • 銀行・信用・契約で普通に使う

日本

  • 主に行政用
  • 銀行や契約では基本使わない
  • 比較的新しい制度

時間の差も大きい。
アメリカは1936年制定。
日本は21世紀。
ほぼ 100年の差 がある。

番号が先に来る社会

どちらが正しいのかはわからない。

アメリカはまず番号。
それから人間。

日本はまず人間。
それから、もったいぶって番号。

どちらの社会にも、それぞれの慎重さと合理性がある。
ただひとつ言えるのは、
1990年代初頭のカリフォルニアで何度も聞かれたあの質問だ。

「SSNある?」

あれは単なる事務的な質問ではなかった。

アメリカ社会という入口で、そっと聞かれる言葉だったのだと思う。
アメリカで番号というのは「社会への入場券」みたいなものなのかもしれない。


今回見たのは、あくまで一部です。
インフラ、制度、日常のあらゆる場面に共通しているものとは?
→ 日米の仕組み全体の違いはこちら

当時のアメリカでは、こうした文化の違いが日常のあらゆる場所に存在していました。
なぜアメリカでは水道代が請求されない?
なぜアメリカには電線がない?
アメリカ郵便の超合理的システムとは?
自販機と公衆電話で見えた日米の合理性の違い

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